2020年5月8日の毎日新聞地方版の記事から。
都営団地の自治会が新型コロナウイルス感染にともない自治会員全員に自治会費の蓄えから一律に2万円を給付する。
都営多摩ニュータウン鑓水団地
この団地についての基本データ。
からダウンロードできる資料を見ると、八王子市 鑓水 2-73 に1994年に建設された団地。
管理戸数は118戸と小規模。間取りは2DKから4DKとなっている。
都営団地は入居基準の一つに収入金額が基準以下であること、がある。
以前に読んだ「団地と移民」の中では、UR団地の住民が年金だけの暮らしになると、より家賃の安い都営住宅に転居していくというエピソードが出ていた。
記事では「仕事がなくなったのでありがたい」という声があったと紹介されている。
住民の収入
家族向け住宅のポイント方式では所得金額に制限がある。
ポイント方式については以下のウェブサイトにある。
一部抜き出すと、以下の表にあるように二人世帯では1160000円が上限。
この基準を満たす世帯が住んでいると考えると「みんなに一律二万円」は助かったという方が多いのかもしれない。
コロナ禍で仕事を失った人が二万円を受け取れるのはありがたいことだと思う。
なぜ自治会が?
コロナ禍による収入減少に対する福祉政策として自治体が一律給付をする例はいくつかある。たとえば、以下のハフィントンポストにある富士吉田市は政府が当初収入減少世帯に30万円支給することを発表した際に市民全員に一万円支給を決めている。
鑓水団地自治会のケースは同じことを自治会が行う。自治会は正式な自治体とは違うが全世帯が自治会費を払っているとすれば、税金を徴収している自治体と似たようにも見える。
今回、災害時の備えを取り崩すとのこと。
コロナ禍は災害と言ってもいい事態だからこのお金の使い方は適切に思える。
また、自治会は市町村から業務を委託されている立場であることが多い。つまり、地方行政の一端を担っている実質的な自治体の下部組織。
地方自治体が補助金を出さないならその下に位置する自治会が代わりに出しますよ、という流れもありかも。
自治会などの役割については以前読んだ小熊英二氏のインタビューにも触れられている。
日本は近代化が遅かった国だったので、先進国に比べてソーシャルキャピタル(地域のつながりや人間関係)がとても豊かでした。だから、行政は方針だけは出すけれども、地域のことは地域で、業界のことは業界でやってくださいという、そういう姿勢でやってきたからでしょう。
これまでの日本は、非常に安上がりな国家だったと思います。地域社会の力にあぐらをかいて、行政職員を増やさないでやってきた。なんでそんな安上がりな国家が築けたかと言えば、遅れて近代化したがゆえに、地域社会の関係が多かったからだと思います。自治会長か中学校の先生に聞けば、その地域のどこの家族が貧困であるか、おおかたわかる。つい最近までそういう社会でした。
このインタビューを読むと、住民に対して実際のサービスをするのは地域社会であり自治会だ、というのが今までの日本だったのだということがわかる。
鑓水自治会の助成金は古い日本の自治会のあり方の一面と言っていいのかもしれない。
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